現行著作権法の改正史
現行著作権法の改正の内容を下表にまとた。実質的な改正が5回しか行わなかった旧著作権法と比して、いかに頻繁に改正されているか一目瞭然である。
昭和53年改正 レコード保護条約加入に伴う改正
昭和59年改正 貸与権の創設・侵害罪の罰金額引き上げ等
昭和60年改正 プログラム保護のための整備
昭和61年改正 データベースの保護、有線送信権への一元化等
昭和63年改正 著作隣接権の保護期間延長
平成元年改正 実演家等保護条約加入に伴う改正
平成3年改正 著作隣接権の保護期間の延長等
平成4年改正 私的録音録画補償金制度の導入
平成6年改正 TRIPs条約加入に伴う改正
平成8年改正 保護期間の一律化、罰金額の引き上げ等
平成9年改正 公衆送信権の創設と関連規定の整備
平成11年改正 技術的保護手段回避行為の規制、譲渡権の創設等
平成12年改正 視聴覚障害者の著作物利用促進、侵害救済規定の整備等
(平成12年改正 著作権管理事業法の制定)
平成14年改正 WIPO実演・レコード条約加入に伴う改正
平成15年改正 映画著作物の保護期間延長、教育に関する制限規定の拡充等
平成16年改正 還流レコード防止措置、罰則の強化等
平成18年改正 IPマルチキャスト関連の整備、制限規定の拡充等
(平成19年改正 映画盗撮防止法の制定)
平成20年改正 教科書バリアフリー法制定に伴う改正
平成21年改正 インターネット関連の制限規定の整備、裁定制度の充実化等
平成21年改正 国立国会図書館による公的なネット資料保存可能化
平成24年改正 写り込み等の権利制限規定の整備、違法DLの刑事罰化
平成24年改正 国立国会図書館による私的なネット資料保存可能化
平成26年改正 北京条約加入に伴う改正、出版権制度の拡充
平成28年改正 TPP締結に伴う改正<未施行>
次にインターネットに関係する改正だけをピックアップして、極めて簡潔に改正内容を説明する。
なお、改正内容に応じて、以下のように「枠」を色分けしてある。
主に著作権者の保護を強化するための改正事項。広範囲に影響が及ぶ。
著作物を利用しやすくするための改正事項。比較的広範囲に影響が及ぶ。
主にインターネット関連の事業を行う者に関係する改正事項。
学校の授業の円滑化や障害者が著作物を利用しやすくするための改正事項。
特殊な機能を有する国立国会図書館の事業を円滑に進めるための改正事項。
昭和61年改正
「有線送信」という概念が創設された。
平成9年改正
「放送権」「有線放送権」が「公衆送信権」という権利にまとめられた。
公衆送信権に関し、自動公衆送信には、送信可能化が含まれる旨が規定され、送信の準備段階で公衆送信権が働くようになった(送信可能化権)。実演家とレコード制作者にも送信可能化権が付与された。
コンピュータ・プログラムについては「同一構内における公衆への有線送信」についても公衆送信権の対象になった。
平成11年改正
技術的保護手段の回避に対する規制措置の一環として、技術的保護手段の回避を行う専門プログラムを公衆に公衆送信等した者に対して、刑事罰が科されることになった。
権利管理情報を故意に改変したりする等の行為が著作権等の侵害とみなされることとされた。
平成12年改正
点字をデータ化したり公衆送信することが自由に行えるようになった。
放送と並行しての字幕送信が自由にできるようになった。
平成14年改正
放送事業者及び有線放送事業者に新たに送信可能化権が付与された。
平成15年改正
連携授業等を円滑に行えるように著作物の公衆送信ができるようになり、また、著作物を試験問題として公衆送信することができるようになった。
平成18年改正
IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信の円滑化を図るため、実演家及びレコード制作者の送信可能化権が制限され、代替的に補償金請求権が付与されることになった。
専ら視覚障害者の用に供するために行う録音図書の自動公衆送信が行えるようになった。
平成21年改正
著作権を侵害する自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、その事実を知りながら行う場合には、私的使用目的であっても、著作権侵害となることとなった。
障害者が必要とする幅広い方式での複製等ができるようになった。
ネットオークションの際にサムネイル画像として掲示し、送信することができるようになった。
通信事業者等がミラーリングやバックアップの際に行う著作物複製が許容されることが明文化された。
検索エンジンの機能に付随する複製等が許容されることが明文化さた。
ウェブ情報解析等の過程に付随する著作物の利用が許容されることが明文化された。
インターネットサイトを閲覧する際に自動的に行われるキャッシュの作成などが許容されることが明文化された。
平成21年改正(国立国会図書館法)
インターネット上の公的な性格の資料を国立国会図書館の記録媒体に記録することができるようになった。
平成24年改正(国立国会図書館法)
一般の資料についても、平成21年改正のインターネット資料と同様の扱いができるようになった。
平成21年改正で導入された私的使用目的の複製に当たらない違法ダウンロードが刑罰の対象となった。
<第1章 著作権略史 終わり>
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