国外犯処罰などを規定する刑法総則のみ意義については、4つの説がある。
具体的には、
①構成要件説
②処罰条件説
③手続法説
④準拠法説
である。
どの説も多少なりとも難点を抱えるものの、大コンによると、通説は②である。
②処罰条件説は、政策的に処罰範囲を定めたものとする考え方であるが、「19世紀の国家主義的規範観の遺物」という山中の指摘はもっともである。
ただし、(実質面での差は少ないかもしれないが、)他地域でも特定の行為を行わないという国民の合意が形成(約束)されたというように置き換えた方がよいような気がする。
著作権法の立場から
①構成要件説はまず採り得ない。大コンでは「構成要件に1条以下の要件を取り込むのであるが、これは、刑法の構造上無理があり、また、国際化による4条の2の罪のように、条約によって適用範囲が広がる場合はもとより、2条以下に掲げる罪の範囲に関する法改正ごとに各則の罪の構成要件、とりわけ、故意の範囲までが変更されるとは解しがたい」と的確に批判されている。
著作権法上の罪は、刑法施行法で「著作権法に掲げたる罪」と一緒くたに挙げられており、問題はさらに深刻である。著作権法は法改正によって、刑罰の範囲を順次拡大してきたが、その際に刑法施行法27条が考慮に入れられたことはほとんどないようである(要検証)。
仮に、場所的適用範囲が構成要件であるとすると、改正により著作権法に加えられてきた罪は、立法の際にほとんど配慮されていな構成要件が存在することになるため、このような見解はとても認められないだろう。
③手続法説は、行為地に関する規定を裁判権あるいは管轄権と解するものであるが、著作権法では特に問題とならないと思われる。
(手続法説は、属地主義が採られる罪の場合に問題が多いと思われる。例えば、方法特許のプロセスの一部が外国で行われている場合、日本の裁判所では裁けない可能性が生じる。)
④準拠法説によれば、外国における著作権侵害等により日本で問責されるのは、日本の著作権ということになる。これは妥当な結論であるが、複雑な問題を蔵している気がしてならないが、ひとまず置いておく。
ふと気になったこと
ここでも非親告罪化が大きな問題として立ち上る。外国では罪とならない行為(例えば、フェアユースに該当)であったが、日本に帰ってきたら有罪として逮捕される可能性がなきにしもあらずということになる。
怖いのは、それが外国人による著作物であっても同様ということである。
現在の著作権システムでは、ほぼ世界中の著作物が日本の著作権によって保護されているからである。
例えば、日本人甲が出張で米国に行った際に、米国の学者による英語の論文をフェアユースの範囲で利用したところ、日本の権利制限規定には当たらないため、著作権侵害罪の構成要件は充たしてしまうことになり、警察権が発動される可能性がゼロではないということになる…
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