「注釈刑法(第1巻)」39〜40頁〔高山佳奈子〕
検討
条約によって、各国に同様の義務が課されれば、世界的に見て、不処罰という事態は免れるという見解はもっともである。しかし、他の論理が理解できない。
ベルヌ条約5条(1)と万国著作権条約2条の1及び2は、内国民待遇を規定したものであり(例えば『WIPOが管理する著作権及び隣接権諸条約の解説並びに著作権及び隣接権用語解説』BC―5.1、茶園「知的財産関係条約」266―267頁)、自国民の外国での行動とは何ら関係のない話である。
ベルヌ条約や万国著作権条約で、刑罰に関する義務は何ら規定されていない。
調査は困難だが、他国が著作権法違反の国外犯を罰するという法制を採用しているという例を聞いたことがない。
同様に内国民待遇の原則を採用している産業財産権法(パリ条約2条(1))が国外犯処罰の対象となっていないことの説明がつかない。
➠刑法施行法27条1号と条約が関係あるとはどうしても問題ない。
各国の著作権は別個に発生・存在しているものである点を考慮する必要がある。
国外犯の対象はあくまでも日本の著作権である。
結局、自国の著作権の効力をどこまで及ぼすかという問題ではないか?
刑法5条
参考
ベルヌ条約5条〔保護の原則〕(2) (1)の権利の享有及び行使には、いかなる方式の履行をも要しない。その享有及び行使は、著作物の本国における保護の存在にかかわらない。したがつて、保護の範囲及び著作者の権利を保全するため著作者に保障される救済の方法は、この条約の規定によるほか、専ら、保護が要求される同盟国の法令の定めるところによる。
(3) 著作物の本国における保護は、その国の法令の定めるところによる。もつとも、この条約によつて保護される著作物の著作者がその著作物の本国の国民でない場合にも、その著作者は、その著作物の本国において内国著作者と同一の権利を享有する。
(4) 次の著作物については、次の国を本国とする。
(a) いずれかの同盟国において最初に発行された著作物については、その同盟国。もつとも、異なる保護期間を認める二以上の同盟国において同時に発行された著作物については、これらの国のうち法令の許与する保護期間が最も短い国とする。
(b) 同盟に属しない国及びいずれかの同盟国において同時に発行された著作物については、その同盟国
(c) 発行されていない著作物又は同盟に属しない国において最初に発行された著作物でいずれの同盟国においても同時に発行されなかつたものについては、その著作者が国民である同盟国。ただし、次の著作物については、次の国を本国とする。
(i) いずれかの同盟国に主たる事務所又は常居所を有する者が製作者である映画の著作物については、その同盟国
(ii) いずれかの同盟国において建設された建築の著作物又はいずれかの同盟国に所在する不動産と一体となつている絵画的及び彫塑的美術の著作物については、その同盟国
万国著作権条約2条〔保護の原則〕
2 いずれかの締約国の国民の発行されていない著作物は、他のいずれの締約国においても、当該他の締約国が自国民の発行されていない著作物に与えている保護と同一の保護及びこの条約が特に与える保護を受ける。
3 この条約の適用上、締約国は、自国の法令により、自国に住所を有する者を自国民とみなすことができる。
0 件のコメント :
コメントを投稿