コスメ・ロー(3) これは化粧品?

コスメ・ローでは、コスメ(化粧品)に関する法律について勉強していきます。
第3回「これは化粧品?」では、化粧品に似ていますが、法律では「化粧品」に含まれないものを見ていきます。
「化粧品」から除外されるもの
薬機法2条3項本文は、「化粧品」を
①人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌(ぼう)を変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つためのもの(使用目的)
②身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されるもの(使用方法)
③人体に対する作用が緩和なもの(作用)
と定義しています。

その詳細な内容については、第2回「『化粧品』とは?」で勉強しました。

しかし、①〜③に該当しても、次の④に該当する場合は「化粧品」ではありません(2条3項但書)。
④これらの使用目的のほかに、第1項第2号又は第3号に規定する用途に使用されることも併せて目的とされている物や医薬部外品
つまり、人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌(ぼう)を変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つほかに
(i)薬機法2条1項2号
(ii)薬機法2条1項3号
(iii)医薬部外品
のいずれかにの使用目的もあわせ持つ場合は、化粧品ではないということになるのです。

医薬品と医薬部外品は化粧品から除外
関係する薬機法2条1項2号・3号と2項の条文を抄出します。
薬機法第2条(定義)
この法律で「医薬品」とは、次に掲げる物をいう。
(略)
 二 人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている物(略)
 三 人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物(略)

2 この法律で「医薬部外品」とは、次に掲げる物であつて人体に対する作用が緩和なものをいう。
 一 次のイからハまでに掲げる目的のために使用される物(略)であつて機械器具等でないもの
  イ 吐きけその他の不快感又は口臭若しくは体臭の防止
  ロ あせも、ただれ等の防止
  ハ 脱毛の防止、育毛又は除毛
 二 人又は動物の保健のためにするねずみ、はえ、蚊、のみその他これらに類する生物の防除の目的のために使用される物(略)であつて機械器具等でないもの
 三 前項第二号又は第三号に規定する目的のために使用される物(前二号に掲げる物を除く。)のうち、厚生労働大臣が指定するもの
2条1項は「医薬品」を定義している規定です。
ですから、これらの医薬品の定義に該当する場合は、たとえ上記①〜③の化粧品の定義をみたすとしても、医薬品として法律の適用を受けることとなります。

また、2条2項は「医薬部外品」を定義している規定で、この医薬部外品に該当する場合は、やはり①〜③の化粧品の定義をみたすとしても、医薬部外品として法律の適用を受けることとなります。

医薬部外品とは
医薬部外品について簡単に見ておきましょう。
イメージとしては、医薬品と化粧品の中間的なものと考えておくとよいでしょう。
薬機法2条2項の「医薬部外品」は、次のように分類できます。
①吐きけその他の不快感又は口臭若しくは体臭の防止
②あせも、ただれ等の防止
③脱毛の防止、育毛又は除毛
④ねずみ等の防除の目的のために使用される物
⑤厚生労働大臣が指定するもの
イメージをつかみやすくするために、医薬部外品として有名なものを挙げておきます。 「仁丹」(森下仁丹)・「ヴィックス メディケイテッド ドロップ」(大正製薬)、「ユースキン」(ユースキン)、「CIERO」(ホーユー)、「クリア」(ユニリーバ)、「サラテクト」(アース製薬)、「コンバット」(大日本除虫菊)等が薬用部外品です。
ただし、これら各シリーズの全商品が医薬部外品というわけではなく、薬品や一般の商品も含まれています。詳しくは、各社のホームページ等をご覧下さい。
薬用化粧品
一般によく使用される用語として「薬用化粧品」があります。
実はこの「薬用化粧品」という言葉は、法律で定義されている言葉ではありません。
では何かというと、薬機法2条3項本文の①〜③には該当するもののの「医薬部外品」であるため「化粧品」ではないものを指すのが普通です。。
一般的には薬用化粧品は化粧品の一種と考えられることが多いと思いますが、法律では薬用化粧品は化粧品ではない、ということになりますので注意して下さい。
「メラノCC」(ロート製薬)、「キュレル化粧水」(花王)、「びふナイトパック」(小林製薬)等がいわゆる薬用化粧品に該当します。
参考文献
●薬事法規研究会編「逐条解説 医薬品医療機器法」ぎょうせい,2016年(文中「逐条(一)〜(三)」と略)
●新薬事法研究会編「ベイシス薬機法」薬事日報社,2015年(文中「ベイシス」と略)
●翁健、鰍澤照夫、木村豊彦・山川洋平著「医薬品医療機器等法・薬剤師法・毒劇法解説」薬事日報社,2015年(文中「解説」と略)
●ドーモ編「カラー図解 よくわかる薬機法 全体編〔第4版〕」薬事日報社,2016年(文中「図解」と略)


法律用語 「本文」と「但書」

薬機法2条3項をもう一度見てみましょう。

この法律で「化粧品」とは、人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌(ぼう)を変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なものをいう。ただし、これらの使用目的のほかに、第1項第2号又は第3号に規定する用途に使用されることも併せて目的とされている物及び医薬部外品を除く。

法律の条文の多くは一つの文で完結していますが、時々、この条文のように2つ以上の文から成るものがあります。

薬機法2条3項のように、後の文が「ただし、・・・」となっている条文の場合、前の文を「本文」、後の文を「但書(ただしがき)」と呼ぶ習わしになっています。
原則となることが「本文」で規定され、そこから除外されることが「但書」で規定されるという関係になります。
薬機法2条3項がそのような関係になっているのは、前回と今回で学習したとおりです。

次に、薬機法14条3項を見てみると「第一項の承認を受けようとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、申請書に臨床試験の試験成績に関する資料その他の資料を添付して申請しなければならない。この場合において、当該申請に係る医薬品が厚生労働省令で定める医薬品であるときは、当該資料は、厚生労働省令で定める基準に従つて収集され、かつ、作成されたものでなければならない。」という規定になっています。
この条文も二つの文から構成されていますが、2条3項とは違って「ただし」で接続されているわけではありません。
このような場合は、前の文を「前段」、後の文を「後段」と呼ぶのが普通です。

さらに、まれなケースですが、3つ以上の文から成る条文があります。
その場合は最初の文から順番に「第一文」「第ニ文」「第三文」・・・と呼ぶことが多いです。

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