渋谷達紀著「著作権法」中央経済社 2013年
オススメ度
「一般」は著作権について大まかに知りたい方、「初学者・学部生」は著作権を基礎からしっかり勉強したい方、「大学院生」は司法試験で知的財産法を選択する方、「実務者」はメインの業務で著作権に携わる方が目安となります。
初学者・学部生 ★★
大学院生 ★★★☆
実務者 ★★☆
(個人的愛着 ★★★★★)
紹介
2014年に逝去した知財法学を代表する学者による体系書。著者は知的財産法やその関連領域に広く精通しており、計り知れない貢献をされてきました。
本書は、逝去の前年に出版された著作権法分野の集大成とも呼べる書籍です。
各条項をある程度確立された解釈で説明していくのではなく、自身が信じる立場から理論的に規定の本質を明らかにすることに重点が置かれています。
このようなスタイルが採用されているため、良くも悪くもオリジナリティの高い解釈が多く、通説とは全く異なる意見も散見されます。
ですから、初学者にオススメできる本ではありません。
また、本書の一般的な評価はそれほど高くないといえます。
しかし、そうでありながらも、私個人としては最も愛着を感じる一冊です。
情報の集積が進み、アクセスが容易になったことで、書籍の内容が均質化している気がします。
専門書においても、蓄積された情報(事実や理論等)の中心的な部分を紹介して、たまに自説の展開や新しい問題点の検討などが盛り込まれる、そんな感じで1冊が終わってしまうものが多いのです。
そういった本が重要であることは認識しているつもりですし、オリジナリティを全く感じないわけでもありません。しかし同時にどこか寂しさを覚えずにはいられないのです。
知識・情報の最大公約数を知るには便利な社会である反面、深い個人の思索から生まれてきたもの等は、なかな表舞台に現れてこないのが寂しいのです(個人的には「Wikipedia化する社会」と呼んでいます。)。
そんな中にありながら、本書はWikipedia化されていない強靭な個性を持っています。
ですから、読んでいるときには再三首をかしげてしまいながらも、心から好きな1冊なのです。
個人的な思いばかりになってしまいましたが、著作権で何か腑に落ちないことがあれば、この本を開いてみるといいと思います。
きっと視野が広がり、新たな思索への道が開けることでしょう。
著者は、東京都立大学(現・首都大学東京)、早稲田大学で長く活躍された後、2011年に早稲田大学を退職。2014年8月28日逝去。
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