牧野和夫著「初めての人のためのビジネス著作権法」中央経済社 2017年1月
オススメ度
「一般」は著作権について大まかに知りたい方、「初学者・学部生」は著作権を基礎からしっかり勉強したい方、「大学院生」は司法試験で知的財産法を選択する方、「実務者」はメインの業務で著作権に携わる方が目安となります。
初学者・学部生 ★★☆
大学院生 ★★☆
実務者 ★★★☆
紹介
知財関連の訴訟実務等で幅広く活躍する弁護士による実務書。巻末の著者紹介の最後の部分を引用すると「専門は企業法務(国内外)、契約交渉、紛争解決、国内外訴訟、知的財産、情報法(ネット上の法律問題)、ライセンス、M&A、人工知能の法律問題等瀧に亘る」とあります。
著者紹介は、箔をつけるために往々にして誇張して書かれるものですが、本書の著者に関しては実際にこれらいずれの分野においても第一線で活躍されています。
企業法務(アップルコンピュータの法務部長等を経験)、研究者(国士舘大学教授や英国国立ウェールズ大学経営大学院教授等を経験)等の実績もあり、どのような方向からも法律や事案を検討できるという、余人には得難いスキルが圧倒的な強みでしょう。
本書は知財部や法務部に異動するビジネスパーソンが読むのにちょうどいいライトな内容です。
企業で問題になりそうな事案について、Q&A形式で解説していますが、達人らしく、余計な関連事項には触れず、核心部分をズバッと回答するといった感じです。
「社内研修教育への利用に関するQ&A」や「AI(人工知能)と知的財産権に関するQ&A」にそれぞれ1節が割かれるなど、著者のスキルを活かしたオリジナリティあふれる内容になっています。
残念なのは、読者の興味を惹くような工夫に欠ける点です。
せっかく実用性の高い内容を抜群の信頼度を誇る著者が執筆しているのに、構成やビジュアル面があまりにも平凡で、類書に埋もれてしまいそうです。
むしろ、現実に知財部に配属されたばかりの人と配属から5年程経過した人を迎えて、その質問に回答していくといった内容の方がずっと面白そうなものができそうな気がするのは私だけでしょうか。
著者は弁護士・弁理士(芝綜合法律事務所)
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