小川明子著「文化のための追求権」集英社新書 2011年10月
オススメ度
「一般」は著作権について大まかに知りたい方、「初学者・学部生」は著作権を基礎からしっかり勉強したい方、「大学院生」は司法試験で知的財産法を選択する方、「実務者」はメインの業務で著作権に携わる方が目安となります。
初学者・学部生 ★★
大学院生 ★★☆
実務者 ★★☆
紹介
ちょっとだけ話題になっている追求権の導入を提案する著作権関連の読み物。商社やフランス国立美術館連合日本法人勤務等の多彩な経歴を持つ著者が、著作権法の基礎をわかりやすく解説した後に、追求権の導入が日本の文化(美術)の発展を促すことを説きます。
「追求権」とは、「すでに人に売り払ってしまった作品が、転売される時、著作者が取引額の一部を支払ってもらえるという権利」(本書84頁)であり、日本では馴染みが薄いものですが、ヨーロッパでは広く取り入れられている制度です。
日本の著作権法は、ヨーロッパの法律をかなり参考にして作られていますので、追求権についてもこれまでに何度か議論されてきました。
現実にはいまだ導入には至っていない追求権ですが、最近大きな動きがありましたので、もしかすると何年か先に日本でも導入されるかもしれません。
追求権は、現行の著作権法に規定されている諸権利とは大きく性質を異にしますので、多方面からの検討が不可欠です。
その前提知識を得るための第一歩としては本書が最適です。他の書籍では、言及されることが少ない追求権に関して貴重な情報を得られます。
小難しい話はなく、実際にあった興味深いエピソードがふんだんに盛り込まれていますので、著作権の知識がゼロという方でも十分に楽しめる内容です。
著者は、山口大学大学研究推進機構准教授。
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