北村行夫=雪丸真吾編著「Q&A 引用・転載の実務と著作権法〔第4版〕」中央経済社 2016年10月
オススメ度
「一般」は著作権について大まかに知りたい方、「初学者・学部生」は著作権を基礎からしっかり勉強したい方、「大学院生」は司法試験で知的財産法を選択する方、「実務者」はメインの業務で著作権に携わる方が目安となります。
初学者・学部生 ★★☆
大学院生 ★★★★
実務者 ★★★★☆
紹介
知的財産関連の法律実務で著名な虎ノ門総合法律事務所弁護士2名を編者とする実務書。引用という狭いテーマに絞っている本書ですが、228頁とけっこうなボリュームです。
頁数に加えて、第4版という版数が、実務における引用の難しさとその対応に懊悩している現場の声を代弁している気がします。
著作権法の実務書は、様々な分野の人を読者として想定すると、どうしても広く浅い記載となってしまい、結果として散漫な内容になりがちです。
ですから、近年は、音楽関係者・IT業界・ソフトウェア関連というように、業種や業界を絞って解説される書籍が増えています。
しかし、そのようにターゲットを絞っても、まだ内容が表面的で、実務書になり切れていないものも多いように感じます。
そんな中にあって、本書は出版業界をメインターゲットに据えた上で、さらに引用とその関連事項に内容を絞り込むことによって、真に実務に直結する書籍として成立しています。
あとがきに「著作権の法律相談で最も多いのは、『いわゆる引用』に関するものである」と書かれており、本書の必要性を的確に把握しているのは、さすがは大手事務所だと感心します。
内容的には、地に足がついており、引用の要件について百出する議論にそれほど深入りすることなく、条文と判例を中心とした端的な解説が展開されています。
「引用」と聞くと著作権法32条がまず思い浮かぶと思います。
もちろん本書でも32条を巡る話題が中心となっていますが、この本では、それ以外にも試験問題での複製(著作権法36条)やオークションの際の美術品の画像掲載(同47条の2)等も広義の引用として、しっかり解説されています。
北村行夫・雪丸真吾はともに弁護士(虎ノ門総合法律事務所)。
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